いちばん誤解が多い1点:うそを書いたかどうかは、問われていません
景品表示法が禁じているのは、実際より著しく良く見せる表示です(第5条第1号・優良誤認表示)。ここで効いてくるのが不実証広告規制という仕組みで、消費者庁は事業者に対し「その表示の裏づけとなる合理的な根拠を出してください」と求めることができます。期限内に出せない場合、その表示は不当表示とみなされます。
ここが分かれ目です。つまり「本当に効くかどうか」ではなく「根拠を紙で出せるかどうか」で決まります。腕のいい店ほど、実感として本当だから書いてしまい、そこで引っかかります。
コーティングそのものが対象になった例があります。2025年12月18日、消費者庁はスマートフォン・タブレット用のコーティング剤の効果表示について、景品表示法第5条第1号(優良誤認)にあたるとして措置命令を出しています(SB C&S株式会社)。※具体的な表示文言は公表資料のPDFに記載があり、こちらでは本文まで確認できていません。「コーティングの効果表示が実際に処分の対象になっている」という事実までを、ここでは扱います。
よく引っかかる言い方5つ
型1
よくある書き方 完全撥水/完全防汚/完全ノーメンテ
「完全」は例外がないという意味になります。雨の当たり方や洗車の頻度で結果が変わるなら、その時点で例外があります。
言い換えの案 水はけが続きます/汚れが落としやすくなります(※効果は使用状況により異なります)
型2
よくある書き方 一生モノ/永久/半永久
期間を言い切ると、その期間ぶんの根拠が要ります。5年後の状態を示す資料を出せるかどうかが問われます。
言い換えの案 施工後◯年を目安にメンテナンスをおすすめしています(前回施工から◯年の実車例あり)
型3
よくある書き方 新車以上の輝き/プロにしか出せない艶
比較する相手が出てきた時点で、その比較の根拠が要ります。「新車以上」は測り方が示せません。
言い換えの案 施工前と施工後を、同じ場所・同じ光で撮った写真を並べる(加工なし)
型4
よくある書き方 通常価格50,000円 → 今だけ29,800円
比べる元の値段には、実際にその価格で売った実績が要ります。売っていない値段を並べると二重価格表示になります。
言い換えの案 都度のご依頼は50,000円(税込)です/キャンペーン価格29,800円(◯月◯日まで)
型5
よくある書き方 地域No.1/施工実績No.1/唯一
No.1表示には、いつ・どこで・誰が調べたかを示せる調査が要ります。体感や口コミの数では足りません。
言い換えの案 ◯◯市で施工◯件(2020年◯月〜2026年◯月・自社集計)
直し方は「消す」ではありません
強い言葉を消すと、伝えたいことまで消えます。やることは、言い切りを事実に置き換えるだけです。施工前後の写真、施工した台数、前回施工からの経過年数——手元にある事実のほうが、形容詞より強く効きます。
ここだけは間違えないでください。- 写真の加工はしないでください。光の当て方を変えるだけで、それは別の車に見えます
- 「効果には個人差があります」を小さく添えても、打ち消しにはなりません。本文と同じ大きさで読めることが要ります
- お客様の声を載せる場合、謝礼や割引と引き換えに書いてもらったものは、お店の広告として扱われます(ステルスマーケティング規制)
では、何を出せば「根拠」になるのか
ここがいちばん知りたいところだと思います。根拠として通りやすいものと、通りにくいものには、はっきりした差があります。分かれ目は「他人が同じ条件でもう一度確かめられるか」です。
通りやすいもの
- 使っている剤のメーカー試験データ(接触角・耐候性・促進耐候試験の結果など)。仕入れ先に請求すれば出てくることが多いものです
- 自店で残した施工記録。施工日・車種・色・使用した剤・工程・かかった時間を、1台ずつ残したもの
- 同じ条件で撮った施工前後の写真。同じ場所、同じ時刻、同じ角度、同じ照明
- 再施工までの実際の経過月数。「前回施工から◯か月で再施工」という記録の積み上げ
通りにくいもの
- お客様の感想だけ。「すごく持ちます」は感想であって、測った結果ではありません
- 施工者の経験年数。腕の証明にはなっても、その表示の裏づけにはなりません
- ネットで拾った一般論。自店の施工についての根拠にはなりません
- 撮影条件がそろっていない前後写真。片方だけ濡れている、片方だけ屋外、というものです
順番を逆にしないでください。「書きたい言葉を決めてから、根拠を探す」と、たいてい見つかりません。いま手元にある記録を見てから、その範囲で書ける言葉を選ぶ。この順番なら、直す作業そのものが要らなくなります。
保証書を出しているお店が、いちばん気をつける1点
コーティングでは「1年保証」「3年保証」という書き方をよく見ます。ここで混ざりやすいのが、保証の期間と効果が続く期間です。この2つは別のものです。
混ざりやすい例
よくある書き方 3年保証だから、3年間ずっと新車の艶が続きます
保証は「決めた条件を満たさなかったときに、こう対応します」という約束です。効果がその期間ずっと同じ強さで続くという意味ではありません。ここを一続きに書くと、3年ぶんの効果の根拠を求められます。
言い換えの案 施工から3年間の保証をお付けしています(年1回の点検・指定の洗車方法が条件です)。艶と水はけの感じ方は、保管状況や洗車の頻度で変わります
保証を書くときに、いっしょに書いておくもの。
- 保証の対象(塗装面のみか、ホイールやガラスを含むか)
- 保証の条件(点検の頻度、洗車の方法、使ってはいけない薬剤)
- 対象外になる場合(飛び石、事故、他店での再施工など)
- 対応の内容(再施工か、部分補修か、返金か)
この4つが書いてあると、保証は強い売りになります。書いていない「3年保証」は、あとでお客様との認識のずれになりやすい部分です。
写真の並べ方だけで、伝わり方が変わります
コーティングは、言葉より写真のほうが速く伝わります。ただし条件がそろっていない前後写真は、逆に信用を落とします。見る人は、思っているよりよく気づきます。
そろえるのは、この4つだけです。
- 場所 同じ位置に停める。床の色が変わると別物に見えます
- 光 同じ時間帯、同じ照明。屋外と屋内を混ぜない
- 角度 立つ位置とカメラの高さを決めておく。足元にテープを貼るだけで揃います
- 状態 どちらも乾いた状態で撮る。片方だけ濡れていると、水膜の艶になります
加工は、明るさの調整も含めて避けてください。「盛った」つもりがなくても、施工前だけ暗く写っていれば、それは比較になりません。撮り方をそろえるほうが、加工より結果が良く見えます。同じ場所・同じ光で撮ると、実際の差がそのまま出るからです。
並べる順番にも意味があります。「施工前 → 施工後」だけでなく、「施工後 → 半年後 → 1年後」を並べているお店は多くありません。これは他店がまず持っていない材料で、しかも言い切りをまったく使わずに持ちの良さを示せます。
直したあとに増えるのは、ホームページだけではありません
ここが、いちばん抜けやすいところです。ホームページの文章を直しても、同じ言葉は他の場所にも置いてあります。
同じ文言が残りやすい場所
- Googleビジネスプロフィールの紹介文と投稿
- Instagram・TikTokのプロフィール欄と、過去の投稿の文字
- ホットペッパーなどの掲載媒体のメニュー説明
- 店頭の のぼり・看板・料金表
- 紙のチラシ、名刺の裏、車両のステッカー
- お客様に渡している保証書やメンテナンス案内の文面
そして、広告は1回直して終わりにはなりません。キャンペーンを打てば新しい文章が増え、SNSに投稿すればそのたびに言葉が増えます。直すのは作業ですが、保つのは習慣です。
続けるためにできる、いちばん軽い形。
- 月に1回、15分だけ。その月に増やした文章だけを読み返します
- 新しく書いた言葉に「完全」「絶対」「永久」「No.1」「最高」が入っていないかだけを見ます
- 入っていたら、根拠が手元にあるかを確かめます。無ければ事実に置き換えます
全部を毎回見直す必要はありません。増えたぶんだけ見れば追いつきます。逆に、これをやめると1年で元に戻ります。
事実だけで書いたページは、弱くなりません
「言い切りを外したら、平凡な文章になってしまう」——よくいただくご心配です。実際は逆になります。
「完全撥水」はどの店でも書けます。だから読む人は読み飛ばします。「施工から14か月経った実車です」「この1年で312台に施工しました」は、その店にしか書けません。数字と実物は、形容詞より強く残ります。
そして、直した文章はそのまま売りになります。保証の条件を書いた店、撮影条件をそろえた前後写真を出した店、経過月数を並べた店。これは全部、正直に書いた結果として出てくるものです。守りのつもりで始めたことが、そのまま他店との差になります。
料金の書き方で、いちばん多いご相談
コーティングは車種の大きさで金額が変わるため、料金の見せ方が難しい業種です。ここでつまずくと、価格の説明そのものが不信につながります。
型6
よくある書き方 ガラスコーティング 29,800円〜
「〜」だけだと、実際にいくらになるのか分かりません。安く見せるためだけの下限だと受け取られると、来店前に離脱します。金額そのものより、上限が分からないことが不安の原因です。
言い換えの案 Sサイズ(軽・コンパクト)29,800円/Mサイズ(セダン・小型SUV)36,800円/Lサイズ(ミニバン・大型SUV)44,800円 ※税込。車種が分からない場合は車名をお送りください
追加料金は、先に全部書いてください。
- いつ追加になるか(鉄粉が多い、水シミが固着している、前施工の除去が要る)
- いくら追加になるか(「別途お見積り」だけにしない。目安の幅でも書く)
- 誰が決めるか(見てから、必ず事前にご連絡してご了承をいただく、と書く)
追加が発生すること自体は、問題になりません。先に書いていないことが問題になります。「作業を始めてから言われた」がいちばん残ります。
メンテナンス会員・月額プランを出しているお店へ
洗車の定額プランやメンテナンス会員を始めるお店が増えています。毎月お金が続けて動く形は、単発の施工とは書き方が変わります。
月額の案内に、必ず書いておくもの
- 毎月いくらか(税込で書く)。「初月無料」を大きく出すなら、2か月目からいくらかを同じ大きさで書きます
- いつ引き落とされるか、そして解約の連絡をするまで続くこと
- どうやって解約するか(LINEでよいのか、来店が要るのか、何日前までか)
- 使える回数の上限(「洗車し放題」と書くなら、月に何回までか、1日に何回までか)
- お休みの日・混雑時の扱い(予約が取れない期間があるなら書いておきます)
「いつでも解約できます」は、条件とセットで書いてください。次回請求日の何日前までか、その日を過ぎたら1か月ぶん発生するのか。ここが書いていないと、解約のときに必ずもめます。もめた話は、そのまま口コミに残ります。
洗車・磨きだけのお店も、同じ考え方です
コーティングをしていなくても、判断のしかたは変わりません。効果を書いたら、その裏づけが要るという一点です。
- 「傷が消えます」→ 消えるものと消えないものがあります。「浅い線傷を目立たなくします。深い傷は残ります」と分けて書くほうが、来店後の説明が楽になります
- 「水アカ完全除去」→「完全」は例外がないという意味です。「固着の程度により、残る場合があります」を本文と同じ大きさで添えます
- 「手洗いだから絶対に傷つきません」→ 絶対は使えません。「洗車傷が入りにくい手順で洗っています(使用するタオル・洗剤・すすぎの順番)」と、やっていることを書きます
よくいただくご質問
Q. すでに何年も出しているチラシに「完全撥水」と書いてあります。すぐ回収すべきでしょうか?
A. まず、これから刷るぶんを直してください。手元の在庫をどうするかは、配布の規模や残数によります。判断に迷う場合は、消費者庁または都道府県の景品表示法の窓口にご相談ください。この記事は行政の判断そのものではありません。
Q. メーカーが「完全撥水」と言っています。そのまま書いてよいですか?
A. 表示の責任は、その広告を出したお店にあります。メーカーの言葉をそのまま使っても、根拠を求められるのはお店側です。メーカーの試験データを取り寄せて、どの条件で測った数値なのかを確かめてから使ってください。
Q. お客様が自分から書いてくれた口コミは、載せてよいですか?
A. 謝礼も割引もなく、お客様が自発的に書いたものであれば、お客様の感想として載せられます。ただし感想は効果の根拠にはなりません。「3年持ちました」という声を、お店として「3年持ちます」と言い換えることはできません。また、割引や特典と引き換えに書いてもらったものは、お店の広告として扱われます(ステルスマーケティング規制)。
Q. 「地域最安値」なら、No.1ではないので書けますか?
A. 同じ扱いになります。最安であることを示すには、どの範囲の、どの店を、いつ調べたのかが要ります。「当店の価格は◯◯円です」と自店のことだけ書くほうが、確かめる手間がありません。
Q. 直すところが多すぎて、どこから手を付ければよいか分かりません。
A. いちばん人が見る1画面から直してください。ホームページなら最初の画面、チラシなら表面の上半分です。そこにある言い切りを事実に置き換えるだけで、大半は収まります。奥のページは、そのあとで構いません。
言い換え早見表
迷ったときに、ここだけ見れば直せる形にしました。左をそのまま右に置き換えれば、伝えたい中身は残ります。
- 完全撥水 → 水はけが続きます(効果の感じ方は保管状況で変わります)
- 汚れが付きません → 汚れが落としやすくなります
- 一生モノ/永久/半永久 → 施工後◯年を目安に点検をおすすめしています
- ノーメンテナンス → 普段のお手入れは水洗いだけで済みます
- 新車以上の輝き → 施工前と施工後を、同じ場所・同じ光で撮った写真をご覧ください
- 絶対に傷つきません → 洗車傷が入りにくい手順で洗っています(手順を明記)
- 傷が消えます → 浅い線傷を目立たなくします(深い傷は残ります)
- 水アカ完全除去 → 水アカを落とします(固着の程度により残る場合があります)
- プロにしか出せない艶 → ◯◯の工程を◯時間かけて行っています
- 地域No.1/施工実績No.1 → ◯◯市で施工◯件(◯年◯月〜◯年◯月・自社集計)
- 地域最安値 → 当店の価格は◯◯円(税込)です
- 唯一/当店だけ → ◯◯を導入しています(導入年月を書く)
- 通常50,000円 → 今だけ29,800円 → 通常価格50,000円(税込)/キャンペーン価格29,800円(◯月◯日まで)
- 今だけ/期間限定(終わりを書かない) → ◯月◯日まで(終わる日を必ず書く)
- お客様満足度98% → 施工後アンケート◯件中◯件が「満足」(◯年◯月〜・自社調べ)
- 3年保証だから3年ずっと艶が続きます → 施工から3年間の保証をお付けしています(条件を併記)
- 洗車し放題 → 月◯回まで/1日1回まで(上限を書く)
- いつでも解約できます → 次回請求日の◯日前までにご連絡ください
- 初月無料(続きを書かない) → 初月無料、2か月目から月◯◯円(税込)
- 効果には個人差があります(小さく添える) → 本文と同じ大きさで、条件そのものを書く
出す前に、この10項目だけ見てください
全部を覚える必要はありません。公開する前に、この10個だけを順に見ると、指摘されやすいところはほぼ拾えます。
- 1.「完全」「絶対」「永久」「100%」が入っていないか
- 2.「No.1」「最高」「唯一」「最安」が入っていないか。入っているなら、調査の出どころを書けるか
- 3. 期間を言い切っていないか(「◯年持ちます」)。目安として書いているか
- 4. 他と比べていないか(「新車以上」「他店より」)。比べているなら、何と比べたか書けるか
- 5. 値引きの元の値段で、実際に売っていた期間があるか
- 6.「期間限定」に、終わる日が書いてあるか
- 7. 打ち消しの一文が、本文と同じ大きさで読めるか
- 8. 前後写真の場所・光・角度・乾き具合がそろっているか。加工していないか
- 9. お客様の声に、謝礼や割引と引き換えのものが混ざっていないか
- 10. 月額プランの解約方法と期限が書いてあるか
この10項目は、広告表現セルフチェック に文章を貼れば機械でも確認できます。ただし機械は文脈を読みません。最後は目で見てください。
それでも判断がつかないとき
ここまで読んで「うちのこの一文は、どちらだろう」と残った場合、それはグレーではなく、情報が足りていないだけのことがほとんどです。判断に要るのは、次の3つだけです。
- その一文は、何かの効果を言っているか(言っていなければ、この話の対象外です)
- 言っているなら、裏づけの紙が手元にあるか(無ければ、書けません)
- 紙があるなら、その紙はどの条件で測ったものか(条件を超えて書くと、また同じことになります)
この3つで決まらない一文は、ほぼ確実に「書かないほうが早い」ものです。消しても、その下に書いてある事実は残ります。そして先ほど書いたとおり、残った事実のほうが読む人には効きます。
このページにできること・できないこと
できること=いま出している文章の中で、指摘されやすい言い方を見つけて、言い換えの案を示すことです。
できないこと=これは行政の判断そのものではありません。個別の広告についての最終判断は、消費者庁や都道府県の窓口にご確認ください。
あわせて使うもの
その1行だけ、見てほしいとき。いま出しているチラシやホームページの気になる一文をそのまま送ってください。引っかかる可能性があるか、どう言い換えれば同じ意味で伝わるかを、1か所だけ無料でお返事します。営業のご連絡はしません。
この表現、うちは大丈夫?と公式LINEで聞いてみる
直すより、作り直したほうが早いこともあります。いま出しているページが古い基準のままだったり、直す場所が多すぎたりする場合です。その判断も含めて、いまLP制作を期間限定 12,000円でお受けしています。無理におすすめはしません。12,000円で収まるかどうかは、購入前にお伝えします。
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