パーソナルジムの広告で、
よく引っかかる言い方5つ

「いつでもやめられます」が危ないのは、うそだからではありません。ジムの契約には、法律で決まった解約のルールが原則として無く、書いた規約がそのまま効いてしまうからです。だから広告の一行が、そのまま「有利に誤認させる表示」になります。条文と、国の発表の原文から説明します。

出典は景品表示法の条文、特定商取引法の政令で指定された役務、国民生活センターの報道発表(2024年1月24日)です。ページの最後に原文のURLをそのまま置いています。
この記事の立ち位置

この記事は、消費者庁が公開している景品表示法・特定商取引法の資料と、国民生活センターの報道発表「スポーツジム等の契約トラブルにあわないために」(2024年1月24日)の原文にあたって書いています。解説記事のまとめ直しではありません。

同じシリーズに 接骨院・整骨院・鍼灸院の回整体・カイロ・リラクゼーションの回エステ・脱毛サロンの回歯科医院・美容クリニックの回カーコーティング・洗車の回 があります。迷う場合は 業種別ガイドの一覧 から選べます。

まず、うちはどれに当たるか

ジムと言っても、法律の見え方は3つに分かれます。ここを取り違えると、直す場所ごと変わってしまいます。先に、お店の中身で確かめてください。

お店の中身見られる法律いちばん気をつけるところ
運動の指導だけ(マシン・自重・フォーム指導・食事のアドバイス)景品表示法法律で決まった解約ルールがありません。書いた規約と広告が、そのまま効きます
痩身機器やハンドトリートメントなど、体重を減らすための施術が入る景品表示法+特定商取引法(エステティック)1か月を超え、かつ5万円を超える契約なら、書面の交付・クーリング・オフ・中途解約に応じる義務がかかる可能性があります
整体・鍼灸・接骨院を併設している上に加えて、施術の広告のルール「治る」「改善する」の書き方に、別の制限がかかります。接骨院・整骨院・鍼灸院の回整体・カイロの回をご覧ください

出典:消費者庁「特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供」(指定されている7つの役務と、エステティックの定義・期間・金額)。3つ目の欄の法律名は、併設する施術の種類によって変わります。

いちばん多いのは1つ目です。そして1つ目がいちばん、書き方だけが頼りになります。以下は、その1つ目を中心に書いています。

いちばん誤解が多い1点:ジムには、法律で決まった解約ルールがありません

エステや学習塾には、特定商取引法の「特定継続的役務提供」という決まりがあります。契約書面を渡す義務、8日間のクーリング・オフ、途中でやめるときの精算の上限——これらが法律で決まっています。

ところが、運動指導だけを行うジムは、この対象に入っていません。対象は政令で7つに限られていて、そこにジム・フィットネスクラブはありません。

一次にあたった内容

特定継続的役務として指定されている7つ=エステティック/美容医療/語学教室/家庭教師/学習塾/パソコン教室/結婚相手紹介サービス(消費者庁「特定商取引法ガイド」)。スポーツジム・パーソナルジムはこの7つに含まれていません。

ここが分かれ目です
法定のルールが無いということは、「規約に書いたことが、そのまま効く」ということです。

お店にとっては自由度が高い。その代わり、広告に書いた一行の責任も、そのままお店に返ってきます。「いつでもやめられます」と書いて、実際には違約金や自動更新があるなら、景品表示法の有利誤認表示(第5条第2号)に当たる可能性が出てきます。国が助けてくれる仕組みが無いぶん、書き方だけが頼りになる業種です。

ただし「痩せるための施術」を足すと、話が変わります

特定商取引法の政令は、エステティックを「人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと」と定義しています。「体重を減ずるための施術」——ここが、いまのパーソナルジムに関わってきます。

痩身機器を当てる、ハンドトリートメントを行う、そういったメニューを組み合わせている場合、その部分がエステティックにあたる可能性があります。エステティックは1か月を超え、かつ5万円を超える契約が対象で、対象になれば概要書面・契約書面の交付義務、クーリング・オフ、中途解約に応じる義務がかかります。

ここは断定できません。該当するかどうかは、実際のメニューの中身による個別判断です。この記事では「運動指導だけなら対象外、施術が入るなら確認が要る」というところまでを扱います。あてはまりそうな場合は、お住まいの都道府県の消費生活担当課、または消費者庁にご確認ください。こちらで「大丈夫です」とは言えません。

よく引っかかる言い方5つ

型1/景品表示法 第5条第1号(優良誤認)+不実証広告規制

よくある書き方 2か月で−10kg/必ず痩せます/リバウンドしません

消費者庁は、書いた効果について「その裏づけとなる合理的な根拠を出してください」と求めることができます。期限内に出せなければ、その表示は不当表示とみなされます。つまり問われるのは「本当に痩せるか」ではなく「根拠を紙で出せるか」です。実績のあるお店ほど、実感として本当だから書いてしまい、そこで引っかかります。

言い換えの案 2か月コースを終えた方の変化(当店実績・◯名の平均−◯.◯kg/2025年◯月〜2026年◯月・食事記録の提出があった方のみ集計)

型2/景品表示法 第5条第2号(有利誤認) ★この業種でいちばん危ない一行です

よくある書き方 いつでも解約OK/縛りなし/違約金なし

キャンペーン価格の条件として「6か月継続」が付いていたり、中途解約に違約金があったりするのに、広告の目立つところに「いつでもやめられます」とだけ書く。これは条件を隠して有利に見せた表示と受け取られます。国民生活センターの発表にも、利用開始前に解約を申し出て2万5,000円の違約金を請求されたという相談(2023年6月受付・20歳代女性)が載っています。

言い換えの案 月々払いはいつでも解約できます(違約金なし)。6か月割引プランのみ、途中解約のときは残り月数の◯%を申し受けます。手続きは店頭またはマイページから、解約したい月の前月◯日までです。

条件は本文と同じ大きさで、同じ場所に書いてください。小さい注記や別ページのリンク先に逃がすと、打ち消しにはなりません。

型3/景品表示法(体験談・打消し表示の考え方)

よくある書き方 ビフォーアフター写真を並べて「※効果には個人差があります」と小さく添える

ジムのビフォーアフターは、照明・角度・立ち方・撮影時刻でまったく別人に見えます。加工しなくても「体を反らせて撮る」だけで変わります。また、写真のほとんどは食事管理を並行した結果のはずです。それを書かずに写真だけ並べると、「通えばこうなる」と読めてしまいます。小さな注記は打ち消しになりません。

言い換えの案 同じ場所・同じ照明・同じ服装で撮影(加工なし)/週2回×8週+管理栄養士の食事指導あり/30歳代女性・開始時◯kg → 終了時◯kg/この方は当店の平均より変化が大きい方です

型4/景品表示法(二重価格表示)

よくある書き方 入会金50,000円 → 今だけ0円/通常98,000円のところ今月限り49,800円

比べる元の値段には、実際にその価格で売っていた実績が要ります。ずっと「今だけ0円」を出し続けているなら、それは通常価格が0円だということになります。「今月限り」を毎月書き換えるのも同じです。

言い換えの案 入会金は22,000円(税込)です。◯月◯日までにご入会の方は無料になります(このキャンペーンは◯月◯日で終了します)

型5/景品表示法(No.1表示)/医師法・あん摩マツサージ指圧師等法にも関わります

よくある書き方 地域No.1のパーソナルジム/医学的に証明されたメソッド/骨盤の歪みを治します/腰痛が改善します

No.1には、いつ・どこで・誰が調べたかを示せる調査が要ります。口コミの数や体感では足りません。さらに、「治す」「改善する」は、体の不調を治療する行為の表示と読まれます。トレーナーは医療者ではないため、ここは業種の境目を越えます。同じ内容でも「整える」「動かしやすくする」なら、越えません。

言い換えの案 ◯◯市で指導実績◯名(2021年◯月〜2026年◯月・自社集計)/姿勢や動かし方を整えるトレーニングです。痛みや病気の治療は行いません。気になる症状がある方は、医療機関にご相談ください。

実際に何でもめているか(国の相談データ)

国民生活センターに寄せられた、スポーツジム・フィットネスクラブ・パーソナルジム・ヨガ教室などに関する相談の件数です。

年度相談件数
2018年度3,794件
2019年度4,528件
2020年度7,317件(新型コロナの影響で退会・休会の相談が大きく増加)
2021年度4,605件
2022年度4,617件
2023年度3,796件(2023年12月31日までの登録分。前年の同時期は3,249件)

出典:独立行政法人国民生活センター「スポーツジム等の契約トラブルにあわないために契約・解約時に確認したいポイント-」(2024年1月24日)図1。件数はPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)の登録分。

もめている中身は、ほぼこの4つです(同発表より)

4つとも、広告とホームページの書き方で減らせるものです。「解約は◯日までに、マイページのこのボタンから」と最初のページに書いてあれば、そもそも起きません。2022年度の平均契約金額は約17万円(同発表)。金額が大きいぶん、書いていない条件は後から必ず問題になります。

実際に来ている相談は、この4つです

報道発表に載っている相談事例です。要旨にまとめています(受付年月・年代・性別は原文のまま)。

事例1|まだ1回も通っていないのに、違約金2万5,000円

友人と無料体験に行った。体験のあと、2か月は無料でその後は月1万円を超える1年継続の契約をすすめられ、途中でやめると違約金2万5,000円がかかるという説明も受けた。迷ったが友人も入会したので契約した。帰宅後によく考えると払えないと思い、コース開始前に解約を申し出たところ「開始前でも2万5,000円を請求する」と言われた。(2023年6月受付・20歳代・女性)

事例2|口頭で「やめます」と伝えたのに、1年半引き落とされ続けた

1か月3,000円で通い放題という体験キャンペーンの広告を見て来店し、2か月の体験後は月1万8,000円になるプランをカード決済で契約した。1か月後、合わないと思い受付で解約を申し出た。理由を聞かれて答えると「わかりました」と言われたので、解約できたと思っていた。先月カードの明細を見ると、申し出の翌月から毎月1万8,000円が落ちていた。事業者からは「所定の書面が出ていないので返金できない」と返事があった。その書面は受け取っていない。(2023年8月受付・30歳代・女性)

事例3|無料お試しのつもりが、自動で通常プランに移っていた

オンラインヨガ教室の広告を見て、無料お試しキャンペーンに申し込んだ。サイトの規約は確認していない。登録のときにカード番号を入れたが、料金が発生する認識はなかった。先日、明細に月会費1万円の請求があり、さかのぼると前々月も半月分5,000円が決済されていた。お試し期間も含めて1回もレッスンを受けていない。事業者からは「期間終了後は自動的に通常プランに移行するとサイトに書いている」と返信があった。(2023年6月受付・30歳代・女性)

事例4|無人ジムで、解約の画面が途中で進まなくなった

広告を見て格安のジムを申し込んだ。手続きはすべてネットで完結し、店舗にスタッフはいない。3か月目にやめたくなり、案内どおりスマートフォンで解約手続きを進めたが、途中で画面が動かなくなった。電話はつながらず、無人店舗なので直接聞くこともできない。このままでは支払いが続いてしまう。(2023年8月受付・60歳代・男性)

出典:国民生活センター「スポーツジム等の契約トラブルにあわないために契約・解約時に確認したいポイント-」(2024年1月24日)1.相談事例。要旨は当社でまとめました。

相談している方の、年代と金額

ここは、広告の書き方を決めるうえでいちばん効く数字です。2022年度の内訳です。

項目数字
契約した方の性別女性が約7割(女性3,179件/男性1,362件)
いちばん多い年代男女とも40歳代(女性695件・男性281件)
どこで契約したか店舗購入 3,502件(75.9%)/通信販売 464件(10.0%)
平均の契約金額約17万円

出典:同発表【参考資料】図2・図3・図4(2022年度・PIO-NET登録分)。割合は同発表の記載のとおりです。

この数字から言えることは、1つです。

もめているのは、40代の女性が、店舗で説明を受けて契約したものが中心です。ネットで比べてから来店し、店頭で口頭の説明を聞いて決めています。つまり「店頭で言ったことが、ページに書いていない」——そこがずれの正体です。

逆に言えば、解約の条件と総額をページに書いておけば、納得した方だけが来店します。説明の手間も、あとのもめ事も、同時に減ります。平均17万円の契約で、月々の数字だけを見せて来店してもらう作り方は、いまは割に合いません。

直し方は「消す」ではありません

強い言葉を消すと、伝えたいことまで消えます。やることは、言い切りを事実に置き換えるだけです。指導した人数、続いている方の割合、トレーナーの経歴、1回の時間、料金の総額——手元にある事実のほうが、形容詞より強く効きます。

この業種で、いちばん効く直し方はこれです。

消したあとに、書き足す3つ

言い切りを消すだけで終わると、ページは「何も言っていないページ」になります。消した場所に、事実を入れてください。この業種で効くのは、次の3つです。

1|総額と、やめ方を、料金表の中に書く

月額だけを大きく出して、入会金・事務手数料・食事指導料をあとから足す作りは、それ自体が有利誤認になります。それ以前に、17万円の買い物をする方は、総額が書いていないページでは決めません。

書き方の例

2か月コース:総額 ◯◯円(税込/入会金・食事指導料・体組成の測定料をすべて含みます。別途かかるものはありません)
解約:月々払いはいつでも解約できます。6か月割引プランのみ、途中解約のときは残り月数の◯%を申し受けます。手続きはマイページから、解約したい月の前月◯日までです。

2|続かなかった方のことを、先に書く

「必ず痩せます」と書けないのは、根拠が出せないからです。そのかわり、続かなかった方の話は書けます。これは根拠が要らないうえ、読んだ方の警戒を解きます。

書き方の例

2か月コースを始めた方のうち、◯人に1人は途中で来られなくなります。理由でいちばん多いのは、仕事の時間が読めなくなったことです。そのため当店は、前日◯時までの予約変更を回数の制限なしにしています。それでも合わない方はいます。合わないと思われた時点で、残り回数ぶんは◯◯の条件でお返しします。

3|1回の中身を、時間で書く

ジムのページは、どこも「オーダーメイド」「あなたに合わせた」と書いてあります。読み比べる方から見ると、全部同じに見えます。差がつくのは、60分の中身を分けて書いたときだけです。

書き方の例

60分の内訳:体調とその週の食事の確認 10分/動きの確認 10分/トレーニング 30分/次の1週間の組み立て 10分。
担当は毎回同じ人です。前回のフォームの動画を見返してから始めます。

そして、これは書いておいてください。1回で変わるとは書かないことです。書くべきは「どのくらい続いた方が、どうなったか」のほうです。週2回を8週、来店が途切れなかった方が何割か——この数字は自分のお店にあります。数字が無い言い切りより、自分のお店にある数字のほうが強く効きます。

このページにできること・できないこと

できること=いま出している文章の中で、指摘されやすい言い方を見つけて、言い換えの案を示すことです。

できないこと=これは行政の判断そのものではありません。個別の広告や契約についての最終判断は、消費者庁や都道府県の消費生活担当課にご確認ください。とくに「うちのメニューはエステティックに当たるか」は、こちらでは判断できません。

あわせて使うもの

出典(すべて一次情報)

この記事の引用は、次の原文にあたって書いています。孫引きはしていません。

この記事で使っている数字について:相談件数・属性・金額は、すべて上の報道発表に載っているPIO-NET登録分です。当社が集計したものではありません。パーソナルジムに対する景品表示法の措置命令の事例は、確認できたものがないため載せていません。「事例がある」と書いてある記事を見かけたら、出典を確かめてください。

次にやることは、3つだけです

① いまの文章を1回、機械にかけてみる。ホームページやチラシの文章を貼るだけで、引っかかりやすい言い方をその場で出す道具を無料で置いています。貼った文章はブラウザの中だけで判定するので、どこにも送られません。会員登録もありません。

広告表現セルフチェックを開く(無料)

② 総額と、やめ方を、料金表の中に書き足す。この記事で書いた3つのうち、いちばん先に効くのはここです。書き足すだけなので、今日できます。

③ それでも迷う一行は、送ってください。いま出しているチラシやホームページの気になる一文をそのまま送ってください。引っかかる可能性があるか、どう言い換えれば同じ意味で伝わるかを、1か所だけ無料でお返事します。営業のご連絡はしません。

この表現、うちは大丈夫?と公式LINEで聞いてみる

直すより、作り直したほうが早いこともあります。いま出しているページが古い基準のままだったり、直す場所が多すぎたりする場合です。その判断も含めて、いまLP制作を期間限定 12,000円でお受けしています。無理におすすめはしません。12,000円で収まるかどうかは、購入前にお伝えします。

期間限定 12,000円のLP制作を見る

広告とは別に、社内の手間で止まっている場合。新人に同じ説明を、何回していますか?(社内研修の管理) もあります。研修の割り当て・期限・未完了者の管理をまとめる話です。