「アレルギーは出ません」が書けないのは、言いすぎだからではありません。景品表示法は、書いた側に根拠の提出を求める作りになっていて、期限内に出せなければ、その表示は不当表示とみなされるからです。そしてもう1つ——同じ店の中で、ネイルとまつげエクステは、かかる法律がまったく違います。条文から説明します。
この記事は、e-Gov法令検索の美容師法の条文、東京都が掲載している厚生労働省通知の一覧、消費者庁が公表した措置命令(消表対第932号・令和3年6月3日)とその課徴金納付命令(令和4年3月29日)にあたって書いています。解説記事のまとめ直しではありません。原文で確認できなかった数字は、この記事には書いていません。
同じシリーズに エステ・脱毛サロンの回、接骨院・整骨院・鍼灸院の回、整体・カイロ・リラクゼーションの回、歯科医院・美容クリニックの回、パーソナルジムの回、動物病院・トリミングの回 があります。迷う場合は 業種別ガイドの一覧 から選べます。
ネイルとまつげエクステを、同じ店で出しているサロンはめずらしくありません。お客さまから見れば、どちらも「爪と目もとをきれいにするお店」です。ところが法律の側から見ると、この2つはまったく別の扱いになっています。
| ネイル(ジェル・スカルプ・ケア) | まつげエクステ・まつ毛パーマ | |
|---|---|---|
| 美容師免許 | 不要。ネイリスト技能検定などは民間の検定で、国家資格ではありません | 必要。美容師法第6条「美容師でなければ、美容を業としてはならない」 |
| 施術できる場所 | 法律上の制限はありません | 美容所のみ。美容師法第7条「美容師は、美容所以外の場所において、美容の業をしてはならない」 |
| 保健所への届出 | 不要 | 必要。美容師法第11条により都道府県知事へ届け出て、第12条の検査確認を受けるまで使用できません |
| 違反したとき | — | 30万円以下の罰金(美容師法第18条) |
なお、ネイルサロンだからといって何をしてもよいわけではありません。まつげエクステを「メニューに1つ足す」場合、その瞬間に美容師法がまるごとかかってきます。お店の主力がネイルであっても、免許と美容所の届出は必要です。
「厚生労働省の通知でそう決まった」と説明されることが多いところですが、正確には少し違います。条文はもともと広く書かれていて、通知は「まつげエクステもそこに入ります」と確認したものです。
「等の方法により」——この一語が効いています。まつげエクステという言葉は条文に出てきませんが、容姿を美しくする方法である以上、ここに含まれます。厚生労働省は、この解釈を通知で3度にわたって示しています。
東京都はこれを受けて、「まつ毛エクステンションの施術は、美容師が、美容所で行わなければなりません」と明記しています。3度も通知が出ているという事実そのものが、この点が守られてこなかったことの裏返しです。裏を返せば、きちんと届け出ている店にとっては、そこが差になります。
どれも、条文または実際の処分にそのまま当たるものです。作った例ではありません。
美容師法 第6条・第7条・第18条
3つとも、書いた時点で「美容師法に違反する営業をしています」と自分で公表しているのと同じ形になります。求人・スクール・出張メニューの3か所で、いちばん起きやすいところです。とくに出張は見落とされます。第7条は、免許を持っている美容師であっても美容所以外の場所での施術を禁じています(政令で定める特別な事情がある場合を除きます)。腕の問題ではなく、場所の問題です。
景品表示法 第5条第1号(優良誤認)/第7条第2項(不実証広告規制)/医薬品医療機器等法
これは作例ではありません。消費者庁が令和3年6月3日に措置命令を出した、実在の表示です(消表対第932号・株式会社ハウワイ)。自社ウェブサイトでの表示が、「使用するだけで、著しいまつ毛の育毛効果が得られるかのように示す表示」にあたるとされました。裏付け資料の提出を求められましたが、提出された資料は合理的な根拠を示すものと認められませんでした。
そして、話はそこで終わりませんでした。翌年の令和4年3月29日、同じ商品について課徴金納付命令が出ています。金額は500万円(景品表示法第8条第1項)。対象期間は令和2年7月6日から令和3年1月21日までの、およそ半年間の売上に対してです。広告を直して終わり、にはなりませんでした。
景品表示法 第7条第2項(不実証広告規制)
ここが、この業種でいちばん多いところです。不実証広告規制は、書いた側に立証責任を移します。消費者庁から資料の提出を求められたとき、その資料が次の2つを満たさなければ、その表示は措置命令との関係では不当表示とみなされます。
②が、いちばん見落とされます。メーカーの試験成績書を持っていても、それが「一般的な皮膚刺激性の試験」であって、「誰にもアレルギーが出ない」ことの証明ではない場合、①は満たしても②で落ちます。アレルギーは体質によって出るものなので、そもそも「出ない」を証明することができません。ここは、資料を集めれば通る話ではありません。
「出ません」を「出た場合にどうするか」に書き換えるだけで、文章は強くなります。お客さまが本当に不安なのは、出るか出ないかではなく、出たときに、この店がどうしてくれるかだからです。
景品表示法 第5条第1号(優良誤認)/第7条第2項
No.1やパーセンテージは、書いた瞬間に「その根拠を出せますか」という質問とセットになります。掲載サイトのランキングで1位だったから、という理由で書いている場合、どの範囲を、いつ、どんな方法で比べたのかまで示せる必要があります。「リピート率98%」も同じで、分母が何かを説明できなければ同じ扱いです。
ここでも効いてくるのは、さきほどの2要件です。データを持っていても、それが表示の内容と適切に対応していなければ通りません。「昨年12月の1か月間、ご来店3回以上のお客さまのうち98%」——ここまで書けるなら、それは事実です。書けないなら、数字を落とすほうが早く済みます。
景品表示法 第5条第2号(有利誤認)/二重価格表示
問題になるのは、割引そのものではありません。比較対象にしている「通常価格」で、実際に相当な期間、販売した実績があるかどうかです。開業時から一度も12,000円で売っていないなら、その12,000円は根拠のない数字になります。
サロンで多いのは、「今だけ」を出しっぱなしにしてしまう型です。書いたときは本当に期間限定でも、そのまま1年たてば、それは通常価格です。ホットペッパー・自社サイト・Instagramのプロフィール——3か所に同じ「今だけ」が残っている、というのがよくある形です。
値引きの見せ方は5つの型に整理してあります。金額を1円も下げずに直す書き換え例まで載せているので、値引きの見せ方、5つの型 をあわせてご覧ください。
景品表示法/ステルスマーケティング告示(令和5年内閣府告示第19号・令和5年10月1日施行)
令和5年10月1日から、事業者の表示なのに、一般消費者から見て事業者の表示だと分からないものが、それ自体で不当表示になりました。中身が本当かどうかは関係ありません。お客さまが自分の意思で書いた口コミは対象外ですが、こちらから依頼したり、割引と引き換えにしたりした時点で、店の広告として扱われます。
この業種では、「モニター募集」と「インフルエンサーへの無料施術」が、いちばん抜けやすいところです。無料で施術して投稿してもらう場合、その投稿は店の広告です。「PR」「◯◯サロン様よりご提供」と、分かる場所に、分かる大きさで入れてもらってください。
「治す」「治療」「改善」は、医療の言葉です。爪の変形や変色には、皮膚の病気が隠れていることがあります。サロンでできるのは、あくまで見た目を整えることまでです。ここを曖昧に書くと、法律の問題になる前に、本当に受診が必要なお客さまの受診を遅らせてしまいます。
この一文は、規制対策ではなく信頼の話です。「うちではできません、お医者さんへ」と書ける店は、書けない店より確実に信用されます。減点を避けるための修正が、そのまま加点になる、めずらしい箇所です。
ネイル・まつげエクステには、医療広告のような「体験談・前後写真の一律禁止」はありません。載せられます。ただし2つだけ気をつけてください。1つは本人の許諾。もう1つは、撮影条件をそろえることです。同じ施術でも、光と角度と加工で見え方は大きく変わります。そこに差をつくると、優良誤認の話になります。
ここは、知らないまま書いている店がとても多いところです。エステや学習塾には、特定商取引法の「特定継続的役務提供」という決まりがあります。契約書面を渡す義務、8日間のクーリング・オフ、途中でやめるときの精算の上限——これらが法律で決まっています。
エステティック/美容医療/語学教室/家庭教師/学習塾/パソコン教室/結婚相手紹介サービス(消費者庁「特定商取引法ガイド」)。
ネイルサロン・まつげエクステは、この7つに入っていません。
もう1つ、境目の話があります。特定商取引法の政令は、エステティックを「人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと」と定義しています。ハンドトリートメント、フェイシャル、角質ケアといったメニューを足している場合、その部分がエステティックにあたる可能性があります。対象になれば、1か月を超え、かつ5万円を超える契約に、概要書面・契約書面の交付義務とクーリング・オフ、中途解約に応じる義務がかかります。
この4つは、書かないほうがもめます。法律が決めてくれない領域だからこそ、先に書いた側が強いのではなく、先に書いた側が信用されます。そして書いてあれば、受付で毎回説明しなくて済みます。
禁止の話ばかりだと、何も書けない気持ちになります。実際には、この業種は書けることが多いほうです。先にこちらを見てください。
化粧品でうたえる効能の範囲は、あらかじめ決められています。爪に関するものは3つです。
逆に、「爪が強くなる」「割れなくなる」「伸びるのが早くなる」は、この範囲の外です。そして先に見たとおり、まつ毛については「伸ばす」「増やす」にあたる効能が、そもそもこの範囲にありません。
この3つは地味に見えますが、「保護する」「すこやかに保つ」「うるおいを与える」は、そのまま接客の言葉として使えます。言い換えに困ったら、まずここへ戻してください。
強い言葉を消すと、伝えたいことまで消えます。やることは、証明できない言葉を、確かめられる事実に置き換えるだけです。
3で迷ったら、「これは、お客さまが自分で確かめられることか?」で分けてください。確かめられるものは、ほぼ書けます。
ページの文章を直しても、同じ言葉はほかの場所にも置いてあります。この業種で残りやすいのは、次の場所です。
Q. ネイルだけの店です。届出は本当に要らないのですか?
A. ネイルの施術そのものについては、美容師法の免許も美容所の届出も要りません。ネイリスト技能検定は民間の検定です。ただしまつげエクステやまつ毛パーマを1メニューでも足すなら、そこから先は美容師免許と美容所の届出が必要になります。「ネイルがメインだから」は理由になりません。なお、飲食を提供する場合など、別の法律で許可が要るケースは別途あります。
Q. 自宅サロンでまつエクをやっています。何が問題ですか?
A. 自宅であっても、美容所として届け出て、検査確認を受けていれば問題ありません。問題になるのは届け出ずにやっている場合です。美容師法第12条は、都道府県知事の検査を受けて確認を得たあとでなければ美容所を使用してはならない、としています。広告に「自宅サロン」と書くこと自体は禁じられていません。要るのは届出です。
Q. お客さまの写真は、載せてよいのですか?
A. 載せられます。ネイル・まつげエクステには、医療広告のような体験談・前後写真の一律禁止はありません。気をつけるのは2つだけです。本人の許諾を取ること(撮影時に一言、が確実です)と、ビフォーとアフターで撮影条件をそろえること。照明と加工で差をつくると、そこが優良誤認の話になります。
Q. 「まつ毛が伸びる」と書いている店は、まだたくさんありますが?
A. あります。ただ、実際に措置命令と課徴金500万円が出ています。周りが書いているかどうかは、判断の基準になりません。そして現実的な話として、指摘は行政より先に、同業や利用者から来ます。先に直しておくほうが、消耗しません。
Q. 直すところが多すぎて、どこから手を付ければよいか分かりません。
A. ①求人の募集要項 → ②掲載サイトのクーポン名 → ③ホームページの最初の画面、の順です。①は法律そのものに触れる可能性があり、②は「今だけ」が固まりやすく、③は人がいちばん見ます。奥のページは、そのあとで構いません。
迷ったときに、ここだけ見れば直せる形にしました。左をそのまま右に置き換えれば、伝えたい中身は残ります。
全部を覚える必要はありません。公開する前に、この10個だけを順に見ると、指摘されやすいところはほぼ拾えます。
この10項目のうち、言葉づかいの部分は 広告表現セルフチェック に文章を貼れば機械でも確認できます。ただし機械は文脈を読みません。最後は目で見てください。
できること=いま出している文章の中で、指摘されやすい言い方を見つけて、書ける形への置き換え案を示すことです。
できないこと=これは行政の判断そのものではありません。免許・美容所の届出については、店舗の所在地を管轄する保健所に、広告表示については消費者庁または都道府県の消費生活担当課にご確認ください。とくに「うちのメニューがエステティックに当たるか」は、こちらでは判断できません。
その1行だけ、見てほしいとき。いま出しているメニュー表やホームページの気になる一文をそのまま送ってください。引っかかる可能性があるか、どう書き換えれば同じ意味で伝わるかを、1か所だけ無料でお返事します。営業のご連絡はしません。
この表現、うちは大丈夫?と公式LINEで聞いてみる直すより、作り直したほうが早いこともあります。いま出しているページが古い基準のままだったり、直す場所が多すぎたりする場合です。その判断も含めて、いまLP制作を期間限定 12,000円でお受けしています。無理におすすめはしません。12,000円で収まるかどうかは、購入前にお伝えします。
期間限定 12,000円のLP制作を見る広告とは別に、社内の手間で止まっている場合。新人に同じ説明を、何回していますか?(社内研修の管理) もあります。研修の割り当て・期限・未完了者の管理をまとめる話です。