「効果抜群」「どこよりも安全」が書けないのは、言いすぎだからではありません。獣医療法は、広告してよい事項を法令の側であらかじめ決めていて、そこに載っていないことは、事実であっても広告できないからです。景品表示法とは、止まり方がまったく違います。条文から説明します。
この記事は、農林水産省が公開している獣医療広告ガイドライン本文(PDF・全42ページ)とそのQ&A(令和6年1月作成・全15ページ)にあたって書いています。解説記事のまとめ直しではありません。引用したページ番号は、各項目にそのまま添えています。
同じシリーズに 接骨院・整骨院・鍼灸院の回、整体・カイロ・リラクゼーションの回、エステ・脱毛サロンの回、歯科医院・美容クリニックの回、パーソナルジムの回、カーコーティング・洗車の回 があります。迷う場合は 業種別ガイドの一覧 から選べます。
ほかの業種の広告規制は、たいてい「言いすぎたら止まる」という形をしています。景品表示法がそうです。ところが動物病院は、そこがまるごと逆になっています。
つまり広告してよい事項が、法律と省令の側にリストとして先に書いてあります。そのリストに無い事項は、内容が事実であっても、誇張がなくても、広告できません。「うそは書いていないのに」という感覚が、いちばん通じない業種です。
なお、この制限がかかるのは獣医師だけではありません。条文は「何人も」と書いています。ペットショップの店員が特定の動物病院の腕前を口頭で勧めた場合も、対象になり得ます(Q&A 第2 問1)。広告代理店や掲載媒体も、依頼者とともに指導等の対象になり得ます(ガイドライン P.6)。
ここを知らずに、書いてあるものを全部消してしまう方が多いところです。ガイドラインは、診療施設のホームページを原則として広告に当たらないと整理しています。飼い主さんが自分で検索して開くものだからです。
ただし、同じページが「広告」に変わる入り口がいくつもあります。変わった瞬間、さきほどのリスト方式が全部かかってきます。
逆に、自分の意思で友だち登録した人だけが読めるメッセージアプリの配信は、広告に当たりません(Q&A 第2 問3)。鍵付きアカウントも同じ扱いです(同 問11)。中身ではなく、出す先で決まると考えると間違えません。
どれも農林水産省のガイドラインとQ&Aに、広告できない例としてそのまま載っているものです。作った例ではありません。
獣医療法施行規則 第24条第2項第1号イ(比較広告の禁止)
比べる相手が出てきた時点で比較広告になります。特定の病院名を出していなくても同じです。「ほかより」「地域で一番」も同じ扱いになります。
ガイドラインは、これも比較広告に当たるとしています。有名な方が来ていることで、ほかより優れて見えてしまうためです(P.19)。
獣医療法施行規則 第24条第2項第1号ロ(誇大広告の禁止)
「抜群」は何を根拠にしているのか示せません。「比較的安全」は何と比べて安全なのかが不明で、客観的な事実として証明できません(P.20)。強調のつもりで足した一語が、そのまま誇大広告の例になります。
獣医師の品位を損なう広告(ガイドライン P.21〜22)/獣医師法 第8条
ここが、ほかの業種といちばん違うところです。二重価格かどうか以前に、費用だけを強調して誘うこと自体が認められていません。「安価にて」「手軽に」「セット割引」も、同じ理由で広告できないとされています(Q&A 第4 問2)。獣医師が行った場合は、免許の取消しまたは業務の停止の対象になるおそれがあると明記されています。
獣医療法施行規則 第24条第2項(体験談・ガイドライン P.20〜21)
ここは特に強く書かれています。体験談の中身が、広告してよい範囲におさまっていても、広告としては認められません。感想は飼い主さんごとに当然ちがうもので、ほかの飼い主さんに誤解を与えるおそれがあるためです。お店の口コミ活用が当たり前になっている感覚のまま持ち込むと、ここでつまずきます。
なお、飼い主さんが自分の意思で自分のSNSに書いたものは、原則として広告に当たりません(Q&A 第2 問2・問14)。依頼したり、謝礼を渡したりした時点で、病院の広告になります。境目はそこです。
獣医療法施行規則 第24条第2項(ガイドライン P.21)
いわゆるビフォーアフター写真です。結果は動物の状態によって当然ちがうため、誤認させるおそれのあるものは広告として認められません。写真そのものが一律に禁止されているわけではなく、誤認させるかどうかで判断されます。ここは自己判断が難しい部分なので、迷うなら載せないほうが早く済みます。
意外に思われるところです。治療にかかる時間には標準となる目安がなく、短く書いても長く書いても飼い主さんを誤認させる可能性があるため、比較広告または誇大広告に当たるとされています(Q&A 第4 問1)。親切のつもりで書いた数字が止まる、めずらしい例です。
診療施設が動物用医薬品の販売・授与を行っていると受け取れる広告(ウェブページを含む)は、医薬品医療機器等法に抵触します(Q&A 第4 問5)。獣医師免許があっても、医薬品の販売はできません。薬は、獣医師の処方に基づいて渡すものだからです。
同じ理由で、製薬メーカーの薬のパンフレットを待合室に置くことも、獣医師が特定の医薬品を推薦している広告とみなされるとされています(Q&A 第4 問4)。
医薬品医療機器等法上の承認がないものを用いた治療は、広告できません(Q&A 第3 問5・問7)。実際に行っていても、広告はできないという形です。
ここが、いちばん実務に効くところです。手術・歯石除去・画像診断・避妊去勢手術・健康診断・レーザー療法といった技能や療法にあたる項目は、次の4つを全部そろえて書けば広告できます。裏を返すと、4つのうち1つでも欠けると広告できません。
二次元コードで飛ばすのは、併記したことになりません。ガイドラインQ&Aは「二次元コードの記載では、問合せ先等を併記したことにはなりません」と明記しています(第3 問10)。一目で分かるように、同じ面に書くことが求められます。看板やチラシで、いちばん起きやすい取りちがえです。
なお、イラストや写真、動画を使うこともできます。避妊去勢手術や予防注射の様子を写真で見せる場合も、同じ4点を併記すればよい、とされています(Q&A 第3 問6)。写真が禁止されているわけではありません。
禁止の話ばかりだと、何も書けない気持ちになります。実際には書ける項目のほうが多いので、先にこちらを見てください。
技能・療法・経歴のどれにも当たらない事項は、そのまま広告できます。
最後の1行は覚えておいて損がありません。併設サービスは、堂々と書ける項目です。診療のことを書きにくいぶん、ここが差になります。
書ける例=内科、呼吸器科、消化器科、循環器科、アレルギー科、寄生虫科、外科、整形外科、泌尿器科、繁殖科、放射線科、腫瘍科、画像診断科、皮膚科、耳鼻科、眼科、歯科、麻酔科、神経科、リハビリテーション科、行動診療科 など。
対象動物で示すこともできます=犬・猫専門科、エキゾチックアニマル専門科、うさぎ専門科、フェレット専門科、は虫類専門科、牛専門科 など。
書けない例=鍼灸科・漢方治療科。理由は「言いすぎだから」ではなく、大学の講座名になっていないからです(Q&A 第3 問1)。臨床病理科は講座名にあるため書けます。ここが、リスト方式のいちばん分かりやすい現れ方です。
研修履歴が書けない理由も、実施主体や中身がさまざまで、飼い主さんが適切な選択に役立つかどうかを判断できないからと説明されています。すごさの証明ではなく、飼い主さんが確かめられるかどうかが基準です。
令和5年から6年にかけての改正で、専門性の広告が一部できるようになりました。ただし条件があります。
広告できるのは「農林水産大臣が指定する者が行う、獣医師の専門性に関する認定を受けていること」です(施行規則 第24条第1項第2号)。
ちがいは認定した団体の名前が入っているかどうかだけです。団体名が無いと、どこの認定なのか確かめようがないためです。
非常勤の先生の場合は、非常勤である旨や勤務する日時を示す必要があるとされています。常勤だと思って来院した飼い主さんが、会えないまま帰ることになるからです。
ここから先は獣医療法ではありません。動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)の話です。トリミング(預かる場合)、ペットホテル、ペットシッターは第一種動物取扱業の「保管」にあたり、事業所ごと・業種ごとに都道府県知事等の登録が要ります。
チラシでもホームページでも、第一種動物取扱業者が広告を行う場合は、標識と同じ内容を載せることが求められます。
登録が完了するまで、広告そのものができません。開業前に先行してページを公開する場合は、ここで止まります。無登録での営業は、100万円以下の罰金と案内されています(環境省)。ホームページのフッターに8項目をまとめて置いておくのが、いちばん壊れにくい形です。
なお、獣医師以外の方が「歯石除去を行っています」と広告することはできません。獣医師以外は診療を業として行えないため、獣医療法上は広告に当たらないウェブサイトでの発信であっても、獣医師法違反として取締りの対象になり得るとされています(Q&A その他 問1-2)。トリミングサロンのメニュー表で、実際に起きやすいところです。
とはいえ、いきなり罰金という運用ではありません。相談窓口は都道府県の獣医事担当課で、地方獣医師会と連携して事前の説明にあたっている、と書かれています。迷ったら、出す前に聞けます。
強い言葉を消すと、伝えたいことまで消えます。やることは、書けない項目を、書ける項目に置き換えるだけです。
「どこよりも丁寧に診ます」は書けません。けれど「夜間もつながる連絡先があります」「入院設備が◯床あります」「愛玩動物看護師が◯名います」「駐車場が◯台あります」は、全部そのまま書けます。飼い主さんが病院を選ぶとき、実際に見ているのはこちらです。
この3つで決まらない一文は、ほぼ確実に「書かないほうが早い」ものです。消しても、その下に書いてある事実は残ります。そして残った事実のほうが、読む人には効きます。
ここが、いちばん抜けやすいところです。ページの文章を直しても、同じ言葉はほかの場所にも置いてあります。
そして、広告は1回直して終わりにはなりません。新しい機器を入れれば文章が増え、SNSに投稿すればそのたびに言葉が増えます。直すのは作業ですが、保つのは習慣です。
Q. ホームページは広告ではないなら、体験談を載せてもよいのでしょうか?
A. ホームページに、広告では禁止されている事項を記載すること自体はできます。ガイドラインもそう整理しています(P.24)。ただし同じ箇所で「広告に準じて情報発信し」と求めており、体験談を誘引の目的で使うことは慎むべきものとされています。そして、そのページをリスティング広告やSNS拡散に使った瞬間、広告として扱われます。載せるかどうかより、そのページをどう配るかで決まる、と考えてください。
Q. Googleの口コミは消したほうがよいですか?
A. 飼い主さんが自分の意思で書いた口コミは、原則として広告に当たりません(Q&A 第2 問2)。消す必要はありません。気をつけるのは、こちらから依頼したり、割引や特典と引き換えに書いてもらったりした場合です。その時点で病院の広告として扱われ、体験談の禁止にかかります。景品表示法のステルスマーケティング規制にも触れます。
Q. 開業のお知らせのチラシに、院長の経歴を載せたいのですが?
A. 卒業大学、勤務していた病院名と期間、役職は書けます。学位は「博士(獣医学)(◯◯大学)」のように大学名を付けます。書けないのは、研修コースの受講歴、団体の推薦、海外で取得した専門資格です。迷ったら「飼い主さんが自分で確かめられるか」で分けてください。
Q. 「初診料無料」は、広告しなければやってもよいのでしょうか?
A. Q&Aに同じ質問があります(その他 問2)。答えは「仮に広告しない場合でも、獣医師道に反するおそれに加え、他法令に違反するおそれもあるため、好ましくありません」です。広告しなければよい、という整理にはなっていません。
Q. トリミングだけのサロンです。獣医療法は関係ありませんか?
A. 診療の話をしなければ、獣医療法の広告制限の中心からは外れます。ただし2つ注意があります。1つは第一種動物取扱業の8項目を広告に載せること。もう1つは「歯石除去」のように診療にあたる行為を書かないことです。獣医師以外がこれを広告すると、獣医師法違反として取締りの対象になり得るとされています。
Q. 直すところが多すぎて、どこから手を付ければよいか分かりません。
A. いちばん人が見る1画面から直してください。ホームページなら最初の画面、チラシなら表面の上半分です。そこにある「一番」「安心」「キャンペーン」を、書ける事実に置き換えるだけで大半は収まります。奥のページは、そのあとで構いません。
迷ったときに、ここだけ見れば直せる形にしました。左をそのまま右に置き換えれば、伝えたい中身は残ります。
全部を覚える必要はありません。公開する前に、この10個だけを順に見ると、指摘されやすいところはほぼ拾えます。
この10項目のうち、言葉づかいの部分は 広告表現セルフチェック に文章を貼れば機械でも確認できます。ただし機械は文脈を読みません。最後は目で見てください。
できること=いま出している文章の中で、指摘されやすい言い方を見つけて、書ける形への置き換え案を示すことです。
できないこと=これは行政の判断そのものではありません。個別の広告についての最終判断は、診療施設の所在地の都道府県の獣医事担当課、または農林水産省にご確認ください。ガイドラインにも、判断に苦慮する場合は都道府県に相談するよう書かれています(P.26)。
その1行だけ、見てほしいとき。いま出しているチラシやホームページの気になる一文をそのまま送ってください。引っかかる可能性があるか、どう書き換えれば同じ意味で伝わるかを、1か所だけ無料でお返事します。営業のご連絡はしません。
この表現、うちは大丈夫?と公式LINEで聞いてみる直すより、作り直したほうが早いこともあります。いま出しているページが古い基準のままだったり、直す場所が多すぎたりする場合です。その判断も含めて、いまLP制作を期間限定 12,000円でお受けしています。無理におすすめはしません。12,000円で収まるかどうかは、購入前にお伝えします。
期間限定 12,000円のLP制作を見る広告とは別に、社内の手間で止まっている場合。新人に同じ説明を、何回していますか?(社内研修の管理) もあります。研修の割り当て・期限・未完了者の管理をまとめる話です。