学習塾・家庭教師の広告で、
よく引っかかる言い方5つ

「合格実績◯名」が危ないのは、盛っているからではありません。数え方の業界基準が令和6年7月1日に変わっていて、いま検索して出てくる解説の多くが、古い基準のまま止まっているからです。そしてもう1つ——塾と家庭教師の広告には、景品表示法とは別に、特定商取引法の誇大広告の禁止が直接かかります。こちらは罰金100万円です。条文から説明します。

出典は消費者庁「特定商取引法ガイド」、同「特定商取引に関する法律の解説」(逐条解説)、公益社団法人全国学習塾協会の自主基準および令和6年7月1日の基準変更通知、消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」(令和6年9月26日)です。ページの最後に原文のURLをそのまま置いています。
この記事の立ち位置

この記事は、消費者庁が公表している特定商取引法の逐条解説(令和6年3月19日版)の原文消費者庁「特定商取引法ガイド」の特定継続的役務提供のページ公益社団法人全国学習塾協会が令和6年7月1日に出した「合格実績自主基準の変更について」にあたって書いています。解説記事のまとめ直しではありません。原文で確認できなかった数字は、この記事には書いていません。確認できなかったものは、そのことを本文中に明記しています。

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この記事で分かること
  1. 効いている法律が、1本ではなく2本あります
  2. 教室の中か外かで、法律上の名前が変わります
  3. よく引っかかる言い方5つ
  4. さらに3つ、見落とされやすい型
  5. 2か月・5万円を超えたら、契約の作りが法律で決まります
  6. では、何なら書けるのか
  7. 直し方は「消す」ではありません
  8. よくいただくご質問
  9. 言い換え早見表/公開前の10項目

いちばん誤解が多い1点:効いている法律が、1本ではなく2本あります

広告表現の話になると、たいていは景品表示法の話になります。塾と家庭教師では、それだけでは足りません。特定商取引法という別の法律が、広告そのものを名指しで規制しています。

 景品表示法特定商取引法 第43条
かかる相手商品・サービスを売るすべての事業者特定継続的役務提供をする事業者。学習塾と家庭教師は、ここに指定されています
何を禁じるか著しく優良・有利と誤認させる表示(第5条第1号・第2号)著しく事実に相違する表示/著しく優良・有利と誤認させる表示
対象になる事項品質・規格その他の内容、価格その他の取引条件役務の内容・効果に加えて、省令で9項目が名指しされています(後述)
違反したとき措置命令、課徴金(売上額の3%)100万円以下の罰金(法第72条第1項第1号)、業務改善の指示(第46条)、業務停止命令(第47条)
ここが分かれ目です。景品表示法だけを見ていると、「効果をうたわなければ大丈夫」という発想になります。ところが特定商取引法の側は、料金・支払時期・提供期間・解約の条件・事業者の連絡先までを規制の対象に入れています。つまり、成績の話を一切書かなくても、料金と解約の書き方だけで引っかかることがあります。

省令が名指ししている9項目

特定商取引法施行規則 第103条は、誇大広告等の禁止がかかる事項を、次のように定めています。この9つについて、著しく事実と違うこと、実際より著しく良く見えることを書いてはいけません。

  1. 役務又は権利の種類又は内容
  2. 役務の効果又は目的(逐条解説は、その例として「家庭教師による成績の向上等」を挙げています)
  3. 国・地方公共団体・著名な法人その他の団体・著名な個人の関与(例:「◯◯省推薦」「◯◯県公認」)
  4. 役務の対価又は権利の販売価格
  5. 対価の支払の時期及び方法
  6. 役務の提供期間
  7. 契約の解除に関する事項(クーリング・オフと中途解約の規定に関する事項を含む)
  8. 事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号
  9. 4の対価以外に負担すべき金銭があるときは、その名目と額(入会金・試験料・購入が必要な教材代など)

逐条解説が、塾の広告を名指ししています

ここは、ほかの業種の記事では出てこない部分です。消費者庁の逐条解説は、この業種で実際に見られる書き方を、具体例として挙げています。引用します。

特定継続的役務提供においては、役務の提供により著しい効果の発生、目的の実現があった者を広告上で紹介し、「体重 -○○㎏」、「××テスト +○○点」等の著しい効果の発生、目的の実現を強調した広告が見受けられる。
(中略)具体的には、例えば、「-○○㎏、あなたにも可能です。」といった記述、根拠がないにもかかわらず「+○○点の実績を誇ります。」との記述は、誇大広告に該当する可能性が高いと考えられる。
——消費者庁「特定商取引に関する法律の解説」第43条 解説4

読み方に注意が要ります。ここで問題にされているのは、「本当に+◯点上がった生徒がいるかどうか」ではありません。逐条解説は、判断基準をこう書いています。

他の不特定多数についても、同様の役務提供により同様の効果の発生、目的の実現を、実態上は不確実であるにもかかわらず、広告上うたっているか、又はうたっているとみなし得るか
つまり、実在する1人の生徒の実績であっても、それを「あなたもこうなります」と読める形で出せば、そこが問われます。「◯◯くん、偏差値20アップ!」という掲示そのものが直ちに違法という意味ではありません。問われるのは、その1件を、これから来る全員に起きることのように見せていないかです。この違いが、後で出てくる書き換えの軸になります。

教室の中でやるか、外でやるかで、法律上の名前が変わります

特定商取引法には「学習塾」と「家庭教師」が別々に指定されています。科目でも対象学年でもなく、分かれ目は「どこで教えるか」です。政令の定義をそのまま並べます。

 いわゆる学習塾いわゆる家庭教師
政令の定義入試に備えるため又は学校教育の補習のための、児童・生徒・学生を対象とした学力の教授で、役務提供事業者の事業所その他の役務提供事業者が当該役務提供のために用意する場所において提供されるものに限る入試に備えるため又は学校教育の補習のための学力の教授で、いわゆる学習塾以外の場所において提供されるものに限る
対象になる条件2か月を超え、かつ5万円を超える2か月を超え、かつ5万円を超える
中途解約・提供開始前の上限1万1,000円2万円
中途解約・提供開始後の上限提供済みの対価+2万円又は1か月分の授業料相当額のいずれか低い額提供済みの対価+5万円又は1か月分の授業料相当額のいずれか低い額
オンライン指導は、どちらでしょうか。生徒が自宅で受ける形なら、それは「事業者が用意した場所」ではありません。消費者庁のガイドは、この7役務について「役務の内容がファックスや電話、インターネット、郵便等を用いて行われる場合も広く含まれます」と明記しています。教室を持っている塾でも、オンラインコースの部分は家庭教師として扱われる可能性があります。そして上の表のとおり、そのとき精算の上限額が変わります。ここを取り違えたまま規約を書いている塾は、少なくありません。

ここは「こちらでは判断できない」と正直に書きます。実際の線引きは契約の実態で決まるため、オンラインと通塾を組み合わせているコースがどちらにあたるかは、消費者庁または都道府県の消費生活担当課にご確認ください。この記事でお伝えできるのは、「どちらかで金額が変わるので、確認する価値がある」というところまでです。

そもそも対象から外れる場合もあります

「月謝制だから2か月を超えていない」は、たいてい通りません。年間カリキュラムが前提になっていて、実質的に継続することが決まっている場合、その全体で判断されます。迷ったら、対象である前提で書面を整えるほうが安全です。

よく引っかかる言い方5つ

どれも、条文・逐条解説・業界の自主基準にそのまま当たるものです。作った例ではありません。

型1|合格実績の数え方が、古い基準のまま

景品表示法 第5条第1号(優良誤認)/全国学習塾協会「学習塾業界における事業活動の適正化に関する自主基準実施細則」

危ないやり方 直前講習だけ来た生徒/無料の模試だけ受けた生徒/体験授業だけの生徒を、合格者数に入れている

ここがこの業種で最大の論点です。そして基準は令和6年7月1日に変わりました。公益社団法人全国学習塾協会が、同日付で「合格実績自主基準の変更について」を出しています。いま検索して出てくる解説の多くは、変更前の基準を書いています。

 変更前変更後(令和6年7月1日から)
数えてよい生徒受験直前の6か月間のうち、継続的に3か月を超える期間 在籍し、通常の学習指導を受けた者で、かつ 受講時間数が30時間を超える場合受験直前の6か月間のいずれかに①「在籍」があり、かつ同期間に②30時間以上の「受講」実態、あるいは継続して3か月以上の「受講」実態がある生徒
実務上のちがい在籍3か月超 30時間超の両方が必要在籍があったうえで、3か月以上 または 30時間以上どちらかを満たせばよい

ゆるくなった、と読むのは早いです。同じ通知で、「在籍」と「受講」の定義がはっきり書かれました。ここが実質的にきつくなった部分です。

「在籍」とは、入塾申込書等の契約書面の取り交わしがあり、有料の講座への料金の納入が証明できることを指す。体験授業や模試受験のみ等の生徒はカウントの対象としない。
「受講」とは、対面授業への出席やwebを介してのオンライン受講、映像の視聴等を指す。在籍のみで受講実態が無い生徒はカウントの対象としない。
——公益社団法人全国学習塾協会「合格実績自主基準の変更について」(令和6年7月1日)

つまり、契約書と入金の記録がない生徒は数えられません。そして、席だけあって一度も授業に出ていない生徒も数えられません。同じ通知は、体験授業・体験講習・無料講習・自習・補習、他の事業主体に派遣した講師による授業、単に教室内にいただけの自習時間を、明確に除いています。

同じ通知が定めている、数え方のルール4つ
  • 重複カウントの禁止 同一の生徒がグループ内の複数の塾で要件を満たしても、グループ全体の合格者数を出すときに二重に数えることはできません
  • 校種の合算表示の禁止 同一系列校でも、小学校受験・中学校受験・高校受験・大学受験の内訳を示さずに合計だけを表示することはできません。「△△中学・高校◯◯名合格」という書き方は認められていません
  • 当年度か累積かの明示 当年度(単年度)の実績なのか、過年度からの累積なのかを明示します
  • 範囲・従属性の明示 その実績が「事業主体の全部」「分教室の一部」「チェーンシステムにおける同名塾の全体または一部」「提携塾の全体または一部」のどれにあたるかを明示します
書ける形 2026年度入試 当教室単独の実績です(在籍・受講の記録に基づく実数)/中学受験◯名・高校受験◯名(内訳を分けて記載)/◯◯グループ全体の合計です(重複を除いた実数)

協会の自主基準は、法律そのものではありません。加盟していない塾を法的に縛るものでもありません。ただし、これが「業界で通っている数え方」である以上、そこから外れた数え方は、景品表示法の優良誤認を判断するときに不利にはたらきます。そして現実的には、指摘は行政より先に、保護者と同業から来ます。加盟していなくても、この基準に合わせておくのが安全です。

型2|「全員合格」「必ず◯点上がります」「成績保証」

特定商取引法 第43条(誇大広告等の禁止)/景品表示法 第5条第1号/全国学習塾協会 自主基準実施細則 第3条

危ない例 全員合格/絶対に成績が上がる/必ず+20点/成績が上がらなければ全額返金(条件を書いていない場合)/100%志望校合格

業界の自主基準は、この点をはっきり書いています。「完全」「100%」「絶対」等の完璧性を意味するような用語は使用しない。そして「全員合格」「◯◯点上昇確実」等、生徒の将来を保証するような表示は使用しない——第3条第2項・第3項です。

法律の側でも同じです。特定継続的役務は、消費者庁の定義によれば「その目的の実現が確実でないという特徴を持つ有償の役務」です。確実でないことが、そもそも法律上の前提になっています。そこに「必ず」「絶対」を乗せれば、著しく事実に相違する表示になります。

「成績保証」は、書き方しだいで残せます。禁じられているのは結果を保証することであって、返金という取引条件を約束すること自体は禁じられていません。ただし条件を全部書く必要があります。対象学年・対象科目・出席率の条件・対象になる試験・比較の起点・返金の範囲と時期。ここを書かずに「成績保証」の4文字だけを大きく出すと、景品表示法の有利誤認と、特定商取引法の「解除に関する事項」の両方に触れます。
書ける形 昨年度、当教室で3か月以上受講した◯名のうち、◯名が学校の定期テストで点数を上げました(同じ学校の同一科目で比較)/定期テストで点数が上がらなかった場合、次の1か月分の授業料をいただきません(出席率80%以上の方が対象です)
型3|「地域No.1」「合格者数トップ」「満足度No.1」

景品表示法 第5条第1号/第7条第2項(不実証広告規制)/消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」(令和6年9月26日)

危ない例 ◯◯市 合格実績No.1/地域最大級の合格者数/保護者満足度No.1/おすすめしたい塾No.1

自主基準の第3条第1項は、「日本一」「全国一」「ナンバーワン」「最高」「最大」などの最高級の優位性又は唯一性を意味する用語は、客観的事実に基づく数値又は確実な根拠なしに使用しないとしています。そして、使う場合は客観的データも合わせて掲示するか、要求されたら即対応できる状態にしておくことを求めています。

消費者庁は令和6年9月26日に、この点についての考え方を出しました。「顧客満足度No.1」のような、第三者の主観的評価を指標とするNo.1表示が対象です。合理的な根拠と認められるには、次の4点をすべて満たす必要があるとされています。

No.1表示が合理的な根拠と認められるための4点(消費者庁)
  • 1. 比較対象となる商品・サービスが適切に選定されている 「No.1」を訴求する以上、原則として主要な競合を比較対象とする必要があります。近隣の塾の一部しか比べていない場合は、ここで落ちます
  • 2. 調査対象者が適切に選定されている 「満足度No.1」と書くなら、実際に通った保護者・生徒に聞く必要があります。ウェブサイトを見せた印象だけを聞くイメージ調査では、対応しません
  • 3. 調査が公平な方法で実施されている 自社を選択肢の最上位に固定する、No.1になった時点で調査を打ち切る——報告書は、これらを問題となる例として挙げています
  • 4. 表示内容と調査結果が適切に対応している イメージ調査であることを注記しても、「顧客満足度No.1」という表示が調査結果と対応していないことに変わりはないと明記されています

報告書には、業種を問わず効く事実も書かれています。令和5年度にNo.1表示関連で措置命令を受けたのは13事業者で、同年度に措置命令を受けた44事業者のうちの一定割合を占めます。そして広告主へのヒアリングでは、多くが調査の基本的な内容(質問項目や比較対象)を把握していませんでした。理由は「調査会社を信頼していた」「他社も同じ調査会社を使っていたので問題ないと思っていた」。調査会社に頼んだから安全、にはなりません。責任は表示した側にあります。

書ける形 ◯◯駅から徒歩3分/2008年開校、今年で18年目です/在籍生徒◯名(2026年8月時点)/講師◯名のうち◯名が指導歴5年以上です

「地域最大級」も同じ枠です。「級」を付ければ逃げられる、という理解は通りません。何を基準に、どの範囲で最大なのかを説明できるかどうかで判断されます。

型4|「入塾金無料」「今だけ」「通常◯円 → ◯円」

景品表示法 第5条第2号(有利誤認)/二重価格表示/特定商取引法施行規則 第103条第4号・第9号

危ない例 入塾金22,000円が今だけ無料(1年以上ずっと出している)/通常月額28,000円 → 今なら19,800円/兄弟割・友人紹介割の条件を書いていない

問題になるのは、割引そのものではありません。比較の相手にしている「通常価格」で、実際に相当な期間、その金額で募集していた実績があるかどうかです。開校以来一度も22,000円の入塾金を取っていないなら、その22,000円は根拠のない数字になります。

塾で特に多いのが「今だけ」を出しっぱなしにする型です。春期講習のバナー、夏期講習のチラシ、ホームページの「◯月末まで」——書いたときは本当に期間限定でも、3年間ずっと出ていれば、それが通常価格です。そして塾の場合、掲示の場所が多いのが厄介です。ホームページ、チラシ、教室前の看板、ポータルサイトの掲載ページ、公式LINE。1か所直しても、残りに残ります。

もう1つ、この業種に固有の落とし穴があります。特定商取引法施行規則 第103条第9号は、授業料以外に負担すべき金銭があるときは、その名目と額を規制の対象にしています。教材費・模試代・施設維持費・冷暖房費・講習会費。月謝だけを大きく出して、これらを小さく書く、あるいは書かない形は、景品表示法の有利誤認と特定商取引法の両方にかかります。

書ける形 月額19,800円(週1回・60分)。このほかに教材費が年間◯円、模試代が1回◯円かかります/入塾金は22,000円です。◯月◯日までにお申し込みの方は無料です/2026年4月改定の料金です

値引きの見せ方は5つの型に整理してあります。金額を1円も下げずに直す書き換え例まで載せているので、値引きの見せ方、5つの型 をあわせてご覧ください。

型5|「いつでもやめられます」「返金には応じかねます」

特定商取引法 第42条(書面の交付)/第48条(クーリング・オフ)/第49条(中途解約)/施行規則 第103条第7号

危ない例 いつでもやめられます(実際は3か月分の違約金がかかる)/中途解約による返金は一切行いません/退塾は2か月前の申し出が必要です(法律の上限を超える負担を課す形)

この型は、両方向で問題になります。実際より良く見せる書き方(「いつでもやめられます」)は有利誤認。実際より不利に見せる書き方(「返金は一切ありません」)は、法律で認められた権利を無いように見せる表示になります。そして後者は、書面の記載事項でもあるため、特定商取引法の側で直接問題になります。

2か月超・5万円超の契約なら、中途解約は法律で認められています。事業者はこれを拒めません。請求できる額にも上限があります(学習塾なら提供開始後で2万円か1か月分の授業料相当額の低いほう)。それ以上をすでに受け取っている場合は、残額を返さなければなりません。

ここは、書き方を直すだけで印象がひっくり返る箇所です。「返金しません」と書いてある塾と、「途中でやめる場合は、受けた授業の分をいただき、残りはお返しします」と書いてある塾。同じ法律の下で、後者のほうが正確で、しかも信用されます。法律が決めていることを、そのまま自分の言葉で書く。これがいちばん強い書き方です。
書ける形 ご契約から8日以内は、書面またはメールで無条件に解約できます(クーリング・オフ)/その後も、いつでも中途解約できます。すでに受けた授業の分と、法律で定められた上限額(当塾は2万円と1か月分授業料の低いほう)以内の精算金をいただき、残額はお返しします

さらに3つ、見落とされやすい型

型6|合格者の声・保護者の口コミ

ステルスマーケティング告示(令和5年内閣府告示第19号・令和5年10月1日施行)/個人情報保護法/自主基準実施細則

危ない例 口コミを書いてくれた方に図書カードを進呈(投稿に「PR」等の表示なし)/合格者のお名前と顔写真を、同意を取らずに掲示

令和5年10月1日から、事業者の表示なのに、一般消費者から見て事業者の表示だと分からないものが、それ自体で不当表示になりました。中身が本当かどうかは関係ありません。保護者が自分の意思で書いた口コミは対象外ですが、こちらから依頼したり、特典と引き換えにしたりした時点で、塾の広告として扱われます。

そして塾には、もう1つの問題があります。生徒は未成年です。自主基準は、生徒の氏名を公表する場合に保護者の同意を求めています。写真・映像・文章も同様で、イニシャル(一字以上)であっても同様としています。同意の取り方についても、個人情報保護に関する同意内容書を交付し、生徒・保護者の署名・捺印をした同意書を、当該広告関係者全員から得て保管・管理することと書かれています。口頭で「載せていい?」と聞いただけでは足りません。

書ける形 合格された方には掲載のお願いをしますが、内容の指定はしていません/掲載は書面で同意をいただいた方のみです/掲載を希望されない方には、一切お願いしていません
型7|講師の肩書きと、外部の名前を借りる書き方

特定商取引法施行規則 第103条第3号/景品表示法 第5条第1号

危ない例 東大生講師多数在籍(実際は1名)/プロ講師のみ(定義を示していない)/文部科学省認定のカリキュラム/◯◯県公認

施行規則 第103条第3号は、国、地方公共団体、著名な法人その他の団体又は著名な個人の関与について誤認させる表示を禁じています。逐条解説は、その例として「◯◯省推薦」「◯◯県公認」を挙げ、コースについての認定(「このコースは◯◯省認定」)、事業者についての認定(「当社は◯◯省認定事業者」)、事業についての認定(「◯◯省認定事業」)のいずれも含まれるとしています。法令上の権限によるものかどうかは問いません。

塾で起きやすいのは、教材や検定の名前を借りる形です。市販の教材を使っているだけなのに、その出版社と提携しているように読める書き方。英検の準会場になっているだけなのに、英検が推薦しているように読める書き方。どちらも「関与」の誤認にあたります。

「プロ講師」「難関大生講師」も、定義を示せるかどうかです。「多数」「ほとんど」といった言葉は、実数を出せば済みます。実数を出せない書き方をしているときは、たいてい、出せない事情があります。

書ける形 講師12名のうち、現役大学生が7名、指導歴5年以上の社会人講師が5名です/英検の準会場に登録しています(当教室で受験できます)/使用教材:◯◯社「◯◯」
型8|チラシの「打消し表示」が小さすぎる

景品表示法 第5条/消費者庁「打消し表示に関する実態調査報告書」(平成29年7月)

危ない例 大きく「月額9,800円」、欄外に6ポイントで「※小学生・週1回の場合。別途教材費、施設維持費がかかります」

条件や例外を小さく書いて逃げる形は、打消し表示と呼ばれます。書いてあれば免責される、という考え方は通りません。強調している部分と、打ち消している部分が離れている・小さい・読みにくい場合、一般消費者は打消し表示を読まないものとして判断されます。

塾のチラシは、この形になりやすい業種です。紙面が限られていて、料金体系が複雑で、学年・回数・科目で金額が変わるからです。ただ、これは表示の問題である前に、問い合わせの質の問題でもあります。「9,800円だと思って電話したら、実際は3万円だった」——この電話は、成約しません。お互いの時間が減るだけです。

書ける形 小学生・週1回 月額9,800円/中学生・週2回 月額19,800円(いずれも教材費 年◯円・施設維持費 月◯円が別途かかります)——条件を、金額と同じ大きさで、同じ場所に置く

直し方はシンプルです。「※」を減らして、そのぶん料金表を1つ増やしてください。注記で説明しなければならない料金体系は、たいてい、表にすれば説明が要らなくなります。

2か月・5万円を超えたら、契約の作りが法律で決まります

ここは広告の話から少し外れますが、広告の書き方と直結するので置いておきます。対象になる契約では、次のことが義務になります。

対象になったときにかかること
3番が、いちばん実害につながります。「もう8日過ぎましたので」と説明したあとで、書面の記載に不備があったことが分かると、クーリング・オフ期間はまだ始まっていなかったことになります。そして、事実と違うことを告げたり威迫したりしてクーリング・オフを妨げた場合は、8日を過ぎていても解除できます(法第48条)。書面を整えることは、生徒を守る話であると同時に、塾を守る話です。

広告との関係でいうと、こうなります。ホームページに「クーリング・オフ制度があります」「途中解約できます」と先に書いてある塾は、受付でもめません。そして施行規則 第103条第7号は、解除に関する事項について誤認させる表示を禁じています書かないことが安全、にはなっていません。

では、何なら書けるのか

禁止の話ばかりだと、何も書けない気持ちになります。実際には、この業種は書けることが非常に多いほうです。保護者が本当に知りたいことは、たいてい書ける側にあります。

そのまま書ける、確かめられる事実

この中で、いちばん問い合わせにつながるのは「料金の総額」です。塾選びで保護者が最も不安なのは、月謝以外にいくらかかるのか分からないことだからです。そして総額は、規制の対象ではありません。書いた者勝ちの領域です。

実績を、うたわずに伝える

「合格実績を出すな」という話ではありません。出し方を、逐条解説が問題にしている形から外すだけです。

問われやすい形 偏差値20アップ!あなたもこうなれます/+◯◯点の実績を誇ります
同じ事実の、書ける形 2026年度、当教室から◯◯高校に◯名が合格しました(3か月以上受講した在籍生のみ/当教室単独の実績です)/昨年度、中学3年生◯名のうち◯名が、2学期の内申点を上げました(1学期との比較)

違いは1つだけです。前者はこれから来る人に起きることとして書いています。後者はすでに起きた事実として書いています。後者は数えられて、確かめられて、そして誰にも否定されません。

直し方は「消す」ではありません

強い言葉を消すと、伝えたいことまで消えます。やることは、証明できない言葉を、確かめられる事実に置き換えるだけです。

置き換えの手順は3つだけです。

3で迷ったら、「これは、保護者が入塾前に自分で確かめられることか?」で分けてください。確かめられるものは、ほぼ書けます。

直したあとに増えるのは、ホームページだけではありません

ページの文章を直しても、同じ言葉はほかの場所にも置いてあります。この業種で残りやすいのは、次の場所です。

続けるための、いちばん軽い形。

よくいただくご質問

Q. 個人でやっている小さな塾です。ここまで必要ですか?

A. 規模の要件はありません。特定商取引法の特定継続的役務提供は、期間と金額で決まります。2か月を超え、総額5万円を超えれば、生徒が1人でもかかります。ただ、実務としては負担は大きくありません。要るのは概要書面と契約書面の2枚と、料金の総額を書いた案内だけです。一度作れば、あとは毎年数字を直すだけです。

Q. 全国学習塾協会に加盟していません。自主基準は関係ありますか?

A. 法的な拘束力はありません。加盟していない塾を協会が処分することもありません。ただし、合格実績の数え方について、これ以外に公開された基準が事実上ありません。そのため、景品表示法の優良誤認が問題になったときに、「業界で通っている数え方」として参照される可能性が高いのが実情です。加盟の有無にかかわらず、合わせておくほうが安全です。費用はかかりません。

Q. 合格した生徒の名前と写真を貼りたいのですが。

A. 貼れます。医療広告のような一律禁止はありません。要るのは同意です。自主基準は、生徒の氏名・写真・映像・文章を公表する場合に保護者の同意を求め、イニシャルであっても同様としています。そして口頭ではなく、同意内容書を交付して署名・捺印をもらい、保管することとしています。合格発表の直後は全員が浮かれていて、同意が取りやすい時期です。そこで取っておくと、あとが楽です。

Q. オンライン専門です。学習塾と家庭教師、どちらですか?

A. こちらでは断定できません。政令上、学習塾は「事業者が用意する場所において提供されるものに限る」、家庭教師は「学習塾以外の場所において提供されるものに限る」と書き分けられています。生徒が自宅で受けるなら家庭教師にあたる可能性がありますが、実際の判断は契約の実態によります。ただ、どちらであっても2か月超・5万円超なら特定継続的役務提供にあたることは変わりません。変わるのは中途解約の上限額です。ここは消費者庁または都道府県の消費生活担当課にご確認ください。

Q. 「◯◯高校 合格者数No.1」と書いている塾が近所にあります。うちも書いてよいですか?

A. 周りが書いているかどうかは、判断の基準になりません。消費者庁の報告書は、広告主が「他社も同じ調査会社を使っていたので問題ないと思っていた」と説明した例を挙げたうえで、表示した側に責任があるとしています。そして現実的な話として、合格実績の指摘は行政より先に、保護者と同業から来ます。この業界は、地域の口コミがそのまま集客です。一度「あの塾は数字を盛る」と言われると、消すのに何年もかかります。

Q. 直すところが多すぎて、どこから手を付ければよいか分かりません。

A. ①料金の総額を1か所に書く → ②合格実績の数え方を今年の基準に合わせる → ③「今だけ」の期限を入れる、の順です。①は規制対策であると同時に、いちばん問い合わせが増えるところです。②は毎年3月に効いてきます。③は放っておくと勝手に増えます。奥のページは、そのあとで構いません。

言い換え早見表

迷ったときに、ここだけ見れば直せる形にしました。左をそのまま右に置き換えれば、伝えたい中身は残ります。

出す前に、この10項目だけ見てください

全部を覚える必要はありません。公開する前に、この10個だけを順に見ると、指摘されやすいところはほぼ拾えます。

この10項目のうち、言葉づかいの部分は 広告表現セルフチェック に文章を貼れば機械でも確認できます。ただし機械は文脈を読みません。最後は目で見てください。

このページにできること・できないこと

できること=いま出している文章の中で、指摘されやすい言い方を見つけて、書ける形への置き換え案を示すことです。

できないこと=これは行政の判断そのものではありません。契約が特定継続的役務提供にあたるか、オンラインコースが学習塾と家庭教師のどちらにあたるかは、こちらでは判断できません。消費者庁または都道府県の消費生活担当課にご確認ください。広告表示については消費者庁表示対策課が窓口です。

この記事で、あえて書かなかったことがあります。2011年に学習塾3社が大学合格実績の過大表示で措置命令を受けた、と複数の報道がありますが、消費者庁の公表資料の原文にたどり着けませんでした。そのため、社名・件数・処分の内容は本文で使っていません。裏が取れなかったものは書かない、というのがこのシリーズの方針です。同じ理由で、全国学習塾協会の文書が引用している「公正取引委員会が1985年に示した見解」についても、原文を確認できていないため参考扱いとしています。

あわせて使うもの

その1行だけ、見てほしいとき。いま出しているチラシやホームページの気になる一文をそのまま送ってください。引っかかる可能性があるか、どう書き換えれば同じ意味で伝わるかを、1か所だけ無料でお返事します。営業のご連絡はしません。

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広告とは別に、社内の手間で止まっている場合。新人に同じ説明を、何回していますか?(社内研修の管理) もあります。講師の研修の割り当て・期限・未完了者の管理をまとめる話です。